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遺言・相続・成年後見Q&A
認知症などにより判断能力(事理弁識能力)を常に欠く状態にある方は,自ら契約や財産管理などをすることが困難です。また,そのような方の行った法律行為には,その効力が認められていません。
そのような方の保護や支援をするための制度として成年後見制度があります。超高齢化社会の到来により,成年後見制度は昨今非常に注目されています。
成年後見制度を活用すれば,判断能力が低下した高齢者の財産管理を第三者が代わりに行うことができるので,悪徳業者から両親を守ることが可能になります。ご家族が成年後見人となる場合もありますが,近年は弁護士等の第三者が成年後見人となる場合が増えています。
Q.後見制度にはどのようなものがありますか
成年後見制度には,法定後見制度と任意後見制度の2種類があります。
法定後見制度とは,本人が認知症や精神上の障害により判断能力が不十分な場合に,家庭裁判所に申立てをして,成年後見人等を選任してもらう制度のことをいいます。申立てをすることができるのは,
本人,配偶者,4親等内の親族等です。
任意後見とは,現在は判断能力を持っている方が,将来判断能力が不十分になった場合に備えて,あらかじめ委任契約をして,後見事務の内容や後見人を決めておく制度のことをいいます。
Q.認知症にも程度があると思いますが,法定後見制度にはどのような種類がありますか
本人の判断能力の程度により,後見,保佐,補助の3種類があります。成年後見人等による支援の内容は法律によって定められています。
法定後見制度では,判断能力を常に欠く状態の人には成年後見人を,判断能力が著しく不十分な人には保佐人を,判断能力が不十分な人には補助人を裁判所が選任し,
本人を支援します。本人がどの類型に該当するかは,主治医の診断等を基準として,最終的に家庭裁判所が判断します。
Q.法定後見を申し立てるには,どのような書類を準備すればよいでしょうか
法定後見開始の審判の申立書と付属書類のほか,戸籍や住民票,鑑定書(担当医等に作成して頂くものです。)等の資料を揃えてください。
弁護士に相談すれば,申立てに必要な書類をあなたに代わって揃えてもらうことができます。必要書類の一覧は,家庭裁判所のホームページでも確認できます。
Q.法定後見開始の審判申立てから家庭裁判所での審理について教えてください
家庭裁判所に後見開始の審判の申立てを行うと,申立人と本人への事情聴取が行われ,申立書類や調査結果等を検討して審理が進められます。審判が確定すると, 成年後見人の選任が行われ,成年後見の登記がなされます。
Q.成年後見人等はどのような仕事をするのですか
成年後見人は,本人の財産管理や身上監護を行います。判断能力が十分でない本人に代わって,財産処分に関する契約等の法律行為を代理でき,本人がしてしまった
法律行為取り消すこともできます。具体的には,生活費の支払いや,契約の締結等を本人に代わって成年後見人が行うことになります。
保佐人は,民法13条1項所定の行為(財産管理上の重要な行為が列挙されています)について同意権,取消権を有しています。家庭裁判所に申立てて,同意権,取消権の範囲の拡張や,
一部の代理権が与えられることもあります。
補助人は,家庭裁判所への申立てにより,民法第13条1項所定の行為の一部について同意権,取消権が付与されたり,特定の法律行為について代理権が付与されたりします。
Q.後見人等の仕事はいつまで続くのでしょうか
後見は,本人が死亡した場合に終了します。なお,一度後見人に選任されると勝手に辞めることは出来ません。辞任には家庭裁判所の許可が必要です。 また,不正行為があった場合等は,家庭裁判所により解任される場合があります。
Q.任意後見の手続きはどのようなものですか
任意後見制度とは,本人に十分な判断能力があるうちに,任意後見受任者と委任契約を締結することにより,将来後見人となることを依頼しておく制度です。
任意後見は本人に十分な判断能力(事理弁識能力)があるうちに締結するものであり,契約と同時に後見が開始されるものではありません。将来,本人の判断能力(事理弁識能力)が不十分な状態になった段階で初めて後見が開始されることになります。
なお,任意後見を開始するには,家庭裁判所に対する申立てが必要です。家庭裁判所に対する申立てがなされると,家庭裁判所は「任意後見監督人」を選任し,任意後見が開始します。その後の手続きには任意後見人と任意後見監督人が関与することになります。
Q.任意後見契約の方法を教えてください
任意後見制度を利用する場合は,任意後見受任者の選任,契約事項の取り決めを行い,公正証書により任意後見契約を締結します。そのため,公証役場に行く必要があります。契約が締結されると,法務局に登記されます。
なお,任意後見契約は,任意後見監督人が選任されるまでの間であれば,いつでも公証人の認証を受けた書面により解除することができます。
Q.任意後見開始の方法を教えてください
本人の判断能力が不十分な状況になった場合,本人,本人の配偶者,本人の4親等以内の親族,任意後見人受任者が,家庭裁判所に任意後見監督人の選任を請求することができます。なお,本人以外の者が請求する場合には,原則として本人の同意が必要になります。
任意後見監督人が選任されると,任意後見が開始します。
請求の際には,申立書や後見人等候補者に関する書類などを合わせて提出してください。なお,この際印紙代や鑑定の費用がかかります。
Q.任意後見人はどのような仕事をしますか
家庭裁判所で任意後見監督人が選任されると,任意後見人受任者は本人の財産管理等の後見事務を行います。任意後見監督人は,任意後見人が適切に事務を行っているか監督する等の職務を行います。
任意後見契約は,家庭裁判所による任意後見人の解任,本人の死亡,任意後見人の死亡等により終了します。任意後見人の解任は,任意後見人の不適任等があった場合に,任意後見監督人等が任意後見人の解任を申立て,家庭裁判所が判断します。
Q.任意後見と法定後見とはどのような関係にありますか
任意後見は,法定後見等に優先します。したがって,家庭裁判所が,法定後見等が「本人の利益のために特に必要がある」と認めなければ,任意後見契約の登記がなされている者については法定後見が開始されません。
仮に法定後見等が開始されれば,任意後見はその時点で終了します。
借金をしたりしないか,心配です。両親を守る方法はないでしょうか。
判断力が低下した親の財産管理を,同居中の子が代行することはよくありますが,中には不正に貯金を下ろして使うなどしたために,相続が開始した時には,遺産がほとんどなくなってしまっているというケースもあります。
高齢のため判断力が低下した親の財産管理に,おかしな点や財産独占の疑惑がある場合,他の子から成年後見制度の申立てをすることで,公平公正な財産管理を実現することができます。
このようなケースで,子の1人が成年後見人になると,兄弟間の紛争を生じる可能性がありますし,このような場合には子の一人が成年後見人に選任される可能性は比較的低いでしょう。このような場合は,弁護士などの第三者が成年後見人に選任される場合が多く,その結果として,適正な財産管理がなされ,使途不明金などの発生もなくなるという効果が期待できます。
一切協力しないと言っています。何か良い方法はありませんか。
任意後見は,法定後見等に優先します。したがって,家庭裁判所が,法定後見等が「本人の利益のために特に必要がある」と認めなければ,任意後見契約の登記がなされている者については法定後見が開始されません。
仮に法定後見等が開始されれば,任意後見はその時点で終了します。
ですが,遺言の種類にはどのようなものがありますか
一般的な遺言には,①自筆証書遺言,②公正証書遺言,③秘密証書遺言の3つの様式があります。
Q.自筆証書遺言とはどのようにして作りますか
遺言者が自分で全文を手書きし,日付を書き,署名,捺印することで作成することができます。
Q.自筆証書遺言にはどのような特徴がありますか
自筆証書遺言は,作成が簡易な反面,見つかりやすい場所に保管しておくと,偽造,変造の危険が否定できません。他方で,誰にも見つからないように隠しすぎると,紛失や誰も見つけてくれないために遺言が無視される危険も生じてしまいます。
このような危険を防ぐための遺言の保管場所として,銀行の貸金庫などがよく例に挙げられます。銀行の貸金庫は安全,確実な保管場所である反面,相続人だけで貸金庫の開閉を行うので,相続人以外の者への遺贈をする遺言書の場合には注意が必要です。
自筆証書遺言は,全文を自筆しなければならず,必要事項を書き漏らすと無効になる場合もあります。また,自分で文章を書く力が衰えている場合には作成できません。
手書きの遺言なので,第三者が書いたのではないかとの疑いをもたれ,争いになることもしばしばあります。
Q.公正証書遺言はどのようにして作りますか
証人2人の立会いの下,公証人が遺言者の意思を確認しながら作ってくれます
Q.公正証書遺言にはどのような特徴がありますか
遺言書が第三者によって偽造,変造されることを防ぎ,遺言を適正に管理,実現するために,最も確実な方法といるのが公正証書遺言です。
公正証書遺言は,遺言者の真意を確保するために2人以上の証人が立会って作成され,遺言者が話した遺言内容を公証人が筆記し,遺言者と証人に内容を確認させ,公証人が読み聞かせて作成します。内容を確認して,納得して署名押印した後は,公証人が適正に作成した旨を付記して署名押印するので,真意と異なる遺言がされる危険が低くなります。
公正証書遺言作成後は正本が遺言者に手渡され,紛失の場合にも再発行ができます。また,原本は公証人によって保管されるので,紛失や偽造の危険もありません。
このような特徴から,公正証書遺言は自筆証書遺言に比べ,遺言書の管理とその実現にはるかに適した方法であると言えます。
Q.秘密証書遺言はどのようにして作りますか
遺言者が内容を秘密にした上で遺言書を作成し,公証人と証人の前に封書を提示する遺言です。遺言の存在は明らかになりますが内容は秘密にできる点に特徴があります。
手続きも複雑なので,あまり用いられていません。
Q.遺言をすることで,どのような利点がありますか
遺言をすることで,自分の思い通りに財産の処分ができる,また,死後の相続人間の争いを抑止できるという利点があります。
具体的には,法定相続人ではない者(例えば,遺言者の子の配偶者)に何らかの財産を相続させることも可能です。
また,特定の財産を特定の者(法定相続人以外の者も含まれます。)に対し相続させることも可能です。相続財産に自宅の土地家屋が含まれる場合に,当該土地家屋を同居している子供に相続させたい場合等に遺言をする利点があります。
特定の相続人を,遺言で相続人から外すこともできます。この場合は,遺言書には,廃除の意思と廃除の理由を書き,廃除が認められた場合と認められなかった場合の両方の遺産分割方法を書いておきます。
遺言により,法定相続分と異なる分割方法の指定ができます。そのため特定の相続人等に財産を遺すことはできますが,相続人(ただし,遺言者の兄弟姉妹を除く。)には遺留分と呼ばれる持ち分が認められており,この遺留分を侵害するとその限度で遺言が失効する可能性がありますので注意が必要です。
とはいえ,遺言が失効するのは,遺留分を侵害された者が「遺留分減殺請求」をした場合に限られます。また,仮に遺留分減殺請求がなされ,遺言の一部が失効したとしても,その遺留分の価格を支払って解決することも可能です。ですから,すべてを長女に与える内容の遺言をしておく意味はあると言えます。
亡くなった後も息子の面倒を見てもらえるような良い方法はありませんか。
弁護士が遺言者や相続人に代わり相続に必要な手続などを代行する遺言信託という方法があります。
Q.信託銀行による遺言信託と弁護士による遺言信託にはどのような違いがありますか
信託銀行でも,遺言信託サービスが存在します。内容としては,遺言作成,遺言書の保管,遺言執行手続で,弁護士の場合と大差はありません。しかし,信託銀行が行えるのは,財産の処分,相続に関するものに制限されます。他方,弁護士の場合は取扱業務に制限がなく,認知や後見人の指定などの身分に関することを含めた対応が可能です。
Q.遺言信託を使うとどのような利点がありますか
遺言信託には,遺言の作成や保管などに関するサービスを受けることができる,遺言作成にあたって事前相談を受けることができる,相続税の対策などのアドバイスを受けることができる,相続が生じたときに,財産の分割や,名義変更の代行や,アドバイスをしてもらえるといった利点があります。
相続が発生したら,まず相続人を調査し,相続人の範囲を確定させます。相続人調査は,戸籍謄本や遺言書等を収集して行い,誰が相続人なのかを確定します。 相続人が確定したら,次に,相続財産調査を行います。相続財産調査は,被相続人死亡時点で被相続人が所有していた不動産(市役所で同一市内に所有しているすべての不動産が記載されている名寄帳を発行してもらいます),預貯金(金融機関に相続開始日の残高証明書を発行してもらいます),有価証券等のプラス財産の評価額の調査に加え,借金等マイナス財産の有無の調査も行う必要があります。
Q.どのような人が相続人になるのでしょうか
被相続人(故人)に配偶者(妻,夫)がいる場合は,配偶者は常に相続人になります。
被相続人に子(養子を含む)がいる場合は,被相続人の配偶者とともに相続人になります。胎児も相続人になりますが,死産の場合は相続人になりません。被相続人の死亡時に子がすでに死亡している場合は,孫が子に代わって相続人になります(代襲相続)。
子や孫等の直系卑属がいない場合等は,被相続人の親(父,母)等の直系尊属が被相続人の配偶者とともに相続人になります。
被相続人の子や孫等の直系卑属と被相続人の親(父,母)等の直系尊属が,いずれもいないか,既に死亡している場合等は,被相続人の配偶者と被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。
Q.各相続人はどのような割合で相続するのですか
民法で定められた相続分を法定相続分といいます。法定相続分は遺言や相続分の指定がない場合に用いられるものです。相続人間で協議する場合の目安にもなりますが,相続人全員の合意により,これと異なる割合での遺産を分割することもできます。
①相続人が配偶者と子のとき…配偶者1/2,子1/2
②相続人が配偶者と直系尊属(親,祖父母等)のとき…配偶者2/3,直系尊属1/3
③相続人が配偶者と兄弟姉妹のとき…配偶者3/4,兄弟姉妹1/4
相続人が子だけ,直系尊属だけ,兄弟姉妹だけの場合には,それぞれの相続分は同じ(頭割り)です。ただし,代襲相続のあった場合には,代襲相続人は被代襲者(亡くなった相続人)の相続分を頭割りします。兄弟姉妹については,両親を同じくする兄弟と腹違い,種違いの兄弟(半血兄弟)がいた場合には,半血兄弟の相続分は両親を同じくする兄弟の半分です。
なお,従来民法は子の相続分について,婚姻関係にある夫婦の子を「嫡出子」,婚姻関係によらない子を「非嫡出子」に分けて,非嫡出子の法定相続分は嫡出子の1/2とされていました(900条4号但書き)。しかし平成25年に最高裁で,この規定は憲法が定める法の下の平等という原則(憲法14条1項)に違反し無効であるという決定が出されました(平成25年9月4日最高裁判所大法廷)。これにより,嫡出子と非嫡出子の法定相続分は同じになることになり,民法が改正されました。
改正された法律の規定は,平成25年9月5日以降に亡くなった人の相続について適用され,同年9月4日以前に亡くなった人の相続に関しては旧規定が適用されます。
なお,婚姻によらない子で父親に認知されていない場合は,嫡出子,非嫡出子のいずれにもあたらず,相続分は認められません。
遺言がある場合には,原則として遺言どおりに遺産を分割します(指定分割)。もっとも,相続人全員が同意すれば,原則として,遺言と異なる内容の分割も可能です。 遺言書(自筆証書遺言)が出てきた場合,勝手に開封してはいけません。家庭裁判所にその遺言書を添えて検認の申立てをします。公正証書遺言の場合は,開封して構いません。
遺言書が数通見つかった場合,それぞれの遺言が有効です。 もっとも,複数の遺言書の内容が抵触する場合には,その抵触部分については,遺言者の死亡時に一番近い時期に作成された遺言書の内容が有効となります。抵触する部分について,新しい遺言で古い遺言が撤回されたことになるので,遺言全体が撤回されるわけではありません。内容が異なっても抵触しない場合はいずれの遺言も効力があります。
遺言が遺産分割後に出てきた場合,原則として,遺産分割は無効となり,遺産分割のやり直しが必要です。
相続人全員が合意すれば,遺言と異なる内容の遺産分割をしたり,既に行った遺産分割協議を維持したりすることもできます。しかし,相続人のうち1人でも遺言を理由に遺産分割協議に異議を唱えれば遺産分割のやり直しになります。
遺言で遺言執行者が選任されていた場合には,遺言執行者が再分割をするか遺産分割協議の追認をするかを判断します。
なお,遺言による認知があった場合で被認知者を無視した遺産分割協議や,遺言による廃除があった場合で被廃除者を加えた遺産分割協議は無効になります。
Q.検認とはなんですか
検認とは,家庭裁判所が行う遺言書の形式や状態の調査,確認の手続のことをいいます。封印がされていない遺言書の場合でも検認は必要です。誤って遺言書を開封しても,遺言の効力には影響ありません。検認手続を怠ったり,故意に遺言書を開封したりしたときは5万円以下の過料に処せられる場合があります。
検認をしなくても遺言が直ちに無効になるわけではありませが,遺言書の内容を実現するには検認手続が必要です。ただし,検認は遺言が有効か無効かを判断するものではないため,遺言の無効を主張する場合には別に地方裁判所に対し,遺言無効確認訴訟を提起する必要があります。
遺言の効力を争うことはできますか。
遺言が出てきても,それが偽造されたものと主張されたり,本人の意思が反映されていないと主張されたりして,遺言書の真正等が問題になることが少なくありません。また,遺言書作成時点で,遺言者がアルツハイマー型認知症等に罹患し,遺言をする能力がなく,遺言の有効性が問題となることも数多くあります。
遺言の無効を争いたい場合には,地方裁判所に「遺言無効確認の訴え」を提起することができます。ただし,遺言無効確認の訴えは誰でも提起できるわけではなく,無効とされる遺言によって相続権が害された相続人しか行えません。
もし,遺言書が偽造されていた場合などには,偽造をするなど不正な関与をした相続人の相続欠格を主張することも可能です。
Q.相続にはどのような方法がありますか
相続には,単純承認,相続放棄,限定承認の3種類の方法があります。
Q.単純承認とはどのような方法ですか
被相続人の財産の全てを相続するという方法です。多額の借金がある場合などを除き,最もよく行われる相続方法です。申立て等は必要ありません。
Q.相続放棄とはどのような方法ですか
被相続人の財産を全て相続しないという方法です。家庭裁判所への申立てが必要です。相続する意思のない場合や,財産の大半が借金である場合などによく用いられます。他の相続人の意向に関わらず,相続人各人が1人で申立てることができます。
Q.相続放棄をしなければ相続してしまうマイナスの財産にはどのようなものがありますか
マイナスの財産の具体例としては,銀行や親族,友人からの借金,個人事業主の場合の買掛金,家賃や税金の滞納などがあります。
また,被相続人が他人の借金の保証人になっていた場合,通常の保証債務の場合は,相続人は相続して払う必要があります。継続的な取引による債務を連帯保証している場合は,被相続人の生前に生じた債務に関しては,相続人は払う必要があります。
ただし,保証債務の内容が,身元保証や,包括的信用保証債務(保証金額や期間を定めない連帯保証)の場合は相続されません。これらは,被相続人のみに帰属し,他の人に移転しないものだからです。
Q.限定承認とはどのような方法ですか
被相続人の財産がプラスかマイナスか分からない場合に,預金などのプラスの財産から借金などのマイナスの財産を差し引いて,プラスの財産が残った場合に残った財産を相続する方法です。相続人が複数いる場合は,相続人全員の同意が必要です。 限定承認は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に家庭裁判所に申立てて行います。家庭裁判所が選任した相続財産管理人が財産を精算して,プラスの財産がある場合に,共同相続人が遺産分割手続きを行います。
Q.それぞれの相続方法に期限はありますか
相続放棄と限定承認は,相続開始日(通常,被相続人の死亡日)から3か月以内に家庭裁判所に申立てを行う必要があり,この期限を過ぎると単純承認をしたとみなされることになります。また,相続財産の全部又は一部を処分したときも,同様に単純承認したものとみなされます。ただし,財産調査が3か月以内に終わらない等,相続方法の決定を3か月以内にできない場合は家庭裁判所に申立てることで,熟慮期間を延ばすことができます。
相続して支払うほかないのでしょうか。
借金があることが分かってから3か月が経過していなければ,相続放棄ができる場合があります。弁護士にご相談ください。
Q.相続財産の分割はどのような手続きで行うのでしょうか
相続財産の分割は,単純承認や限定承認をした相続人全員参加の話合い(遺産分割協議)で決定します。協議がまとまったら,それを遺産分割協議書に記載し,相続人全員で署名して実印を押します。
Q.遺産分割協議はいつまでにしなければならないのでしょうか
遺産分割協議に期限はありませんが,相続後10か月以内に相続税を納税しなければ,相続税の優遇措置が受けられなくなるので注意が必要です。
複数の相続人(共同相続人)がいる場合,「債務を特定の相続人が負担する」といった内容の遺産分割協議をしても,債権者の承諾がなければ債権者に主張することはできません。あなたが相続を放棄すれば,財産を相続することはできなくなる代わりに,借金を相続することもなくなります。
遺産がほしいと言っています。 マンションを売らずに遺産を分ける方法はありませんか。
相続財産に不動産が含まれており,不動産の分割(例えば,相続人間で持ち分を分け合うことなど)が難しいケースなどでは,遺産分割協議によって,相続人の中の1人がその不動産を相続し,他の相続人には,相続分に見合った価格を支払うことで解決を図る場合もあります(価格賠償の方法)。
ていますが,実家は2000万円程度の価値があるのに対し,現金は200万円ほどしかありま
せん。このような分け方をして問題はありませんか。
遺産分割協議では,法律で決められている割合以外の割合で分割することができます。
あなたが現金だけをもらうとしても,妹がそれに合意すれば問題ありません。
相続人間で話し合いがまとまらない場合,家庭裁判所を通じた遺産分割調停の申立てをすることができます。調停手続は,家事審判官(裁判官),調停委員らが関与して進められ,双方が合意すれば調停が成立し,調停調書が作成されて遺産分割ができます。
Q.調停で合意できない場合には,どうやって遺産分割をするのでしょうか。
調停で話し合いが付かず,さらに裁判所による解決を望む場合には,家庭裁判所に審判の申立てを行います。審判の場合は,被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申立てることになっています。審判では,当事者双方が主張を尽くした後,家事審判官(裁判官)の判断で強制的に遺産を分割します。
Q.財産の名義変更はどのようにして行えばよいでしょうか
遺産分割協議がまとまったら,財産の名義変更を行います。
不動産の場合は,法務局に遺産分割協議書を提出して所有権移転登記申請を行います。
預貯金の場合は,各金融機関に預金の払い渡し又は名義変更をしてもらいます。なお,預貯金については遺産分割協議書・印鑑証明書に加えて,各金融機関指定の相続届に相続人全員の署名捺印をするように要求される場合があります。
Q.私の母にはそれほど遺産がたくさんありませんでしたが,相続税の申告は必要なのでしょうか。
相続財産の金額が確定したら,相続税の申告を忘れてはなりません。相続税の申告は,相続が発生した翌日(被相続人死亡の翌日)から10か月以内に行う必要があります。
相続税の申告が必要となるのは下記の基礎控除額を超える相続財産がある方です。
基礎控除額=3000万円 + 相続人の人数 × 600万円
なお,平成26年12月31日以前に発生した相続の基礎控除額は,次のとおりです。
基礎控除額=5000万円 + 相続人の人数 × 1000万円
法定相続人の数には相続放棄をした人や,養子縁組で増加した相続人も含まれます。
基礎控除額に達していないものの,それに近い場合には,課税価格に達しない旨を証明する資料の提出を求められることがあるので注意が必要です。
Q.相続税がかかるのは,被相続人名義の不動産や預貯金などだけですか。
相続税は,被相続人名義の不動産や預貯金などだけでなく,相続や遺贈で取得したとみなされる財産(みなし相続財産)にもかかります。みなし相続財産とは,相続財産自体ではないけれど,相続財産と同じような性質を持ち,相続税の課税対象となるものをいいます。具体的には,死亡により支払われる生命保険金,損害保険金,また会社関係のものとして死亡退職金や功労金,退職給付金などが含まれます。
相続税を計算する際は,まず,遺産の税務上の評価額に基づいて遺産の総額を計算します。この場合,相続や遺産によって取得した財産だけでなく,みなし相続財産や相続開始前3年内に贈与した財産など,課税対象の全てを含みます。次に,相続財産から控除できるものと非課税財産の価格を控除して,課税価格を計算します。この課税価格から,基礎控除額(3000万円+(600万円×法定相続人の数))を差し引くと,課税される遺産の総額が算出されます。このようにして算出した課税される遺産の総額を,相続放棄した者も含む法定相続人が法定相続分に応じて取得したものとみなして相続税を計算します。
いいえ。相続税は,財産を相続した法定相続人だけでなく,遺贈や死因贈与によって遺産を取得した人も支払わなければなりません。ですから,遺産の総額が基礎控除額を超えていれば,子供たちだけでなく,あなたも相続税を払う必要があります。
但し,相続財産の課税価格の合計額が基礎控除額に満たないものは,課税の対象外なので支払う必要はありません。つまり,相続財産の合計額が基礎控除額を超える場合にのみ納税の義務があり,基礎控除額を超えない場合は申告,納税の義務はありません。
被相続人の配偶者,未成年などには特別の税額の控除があります。
また,個別の相続財産の中にも一定額まで課税が控除されるものがありますし,一定の条件を満たす場合には,納税猶予された相続税が免除されることがあります。
詳しくは弁護士にご相談ください。
Q.相続税の申告はいつまでにどこで行えばよろしいでしょうか。
相続税の申告は,被相続人の死亡当時の住所地を管轄する税務署に行います。申告書は,税務署の資産税係に行って貰わなければいけません。
相続税の申告は「相続があったことを知った日の翌日から10か月以内」に,申告書を提出して行います(相続税法27条)。その際は,相続人全員が署名,押印した遺産分割協議書を税務署に提出する必要があります。遅れると延滞税が課せられます。
この期間内に遺産分割協議がまとまらない場合でも申告が必要です。この場合は,法定相続分や包括遺贈の割合に従って財産を取得したとして相続税の計算をします。
どうしても期限内に申告できない場合は,所轄の税務署長に申告書の提出期限の延長を申請することができますが,許可なく納税期限を過ぎると無申告加算税が課されます。
過少申告に対しては修正申告と過少申告加算税が課されますが,税金を余計に納めた時は,申告提出期限後1年以内に更正の請求書を税務署に提出すれば,余計分を返金してもらえます。1年経過後でも,申告書に明らかな計算違いがあれば税務署に申告できます。
Q.被相続人が亡くなった場合の各手続きの最終期限はどのようになっていますか
7日以内
死亡届の提出,埋葬許可申請書の提出
14日以内
世帯主変更届の提出,銀行預金口座凍結の連絡,故人が国保,後期医療の場合→資格喪失届,保険証の返還手続,故人が年金受給者の場合→年金受給停止の手続,遺族が健康保険の被扶養者の場合→国民健康保険加入の手続
3か月以内
相続放棄・限定承認の申述
4カ月以内
準確定申告(被相続人の確定申告)
10か月以内
相続税の申告,納付(遺産分割協議がまとまらない場合は法定相続分で分割したものとして納税し,遺産分割協議の確定時点で修正申告等を行います。)
2年以内
故人が健康保険の場合→埋葬料の請求,生命保険の死亡保険金受給の手続,被相続人が国保,後期医療の場合→葬儀の日から2年以内に葬祭費の請求
5年以内
遺族年金請求の手続き